葛藤 / ノルディック班 4年 五十嵐 有冴

 幹部交代式。
例になく以前から通達を受けていたにも関わらず、名前を呼ばれた瞬間、何故か身体が震えたのを覚えている。
 今まで部のエースと言われてきた先輩方が引っ張ってきたノルディック班を任される不安なのか、それとも二部昇格に向けてチームを率いていくという胸の高鳴りからなのかはわからない。様々な想いを抱えたこの日、私のトレーニングチーフとしての1年間が始まった。

 自分の考えや行動が班全体に影響を与える、その責任の大きさは計り知れなかった。
容赦なく立ちはだかる壁と抜け出せない迷路に悩み苦しみ葛藤し、毎日問い続けている中で見えてきたことがある。

 それはチームの導き方に正解は無いということだ。月並みな表現に聞こえるかもしれないが、改めて実感している事である。一方失敗は許されない。自身であれば、失敗や後悔から次はこうしてみようと学ぶ事が出来るが、チームにおいては班員を振り回す結果になるか、若しくは考えも及ばない影響が出る可能性があるからだ。

 最近の傾向として、自主的な部員が多いと感じられることは非常に嬉しい。彼らには、ただ言われたことに従うのではなく、果たして本当にこれで良いのかと疑うぐらいの気持ちで自分の事、仲間の事を一つ一つ改めて考え、その上で納得し行動してほしいからだ。

 極端に言えば、私は良いトレーニングチーフだと思われない方が良いと考えているぐらいである。自分の意思があるということは、確実に原動力に繋がると思う。そして意見を交わし互いが真剣に向き合うことでこそ強いチームが生まれるとも思う。

 そうであるからこそ、義務と権利、自主性と自分勝手の境界に悩み、チームマネジメントに強い葛藤が生じる。
 まだその芯の部分が掴めない自身に憤りを感じる日々だが、現在の私の解釈をパズルに例えるなら、私は枠組みとして輔仁会スキー部のあるべき姿を守り、部員一人一人がその枠組みの中でピースを合わせることによって、今年度の私達の完成画を彩るといったイメージである。

 その完成に向かって目標を見失わないよう道しるべとなり、時には厳しく、時には一番の味方となって彼らが歩を進めていけるように支えたい。そして欲を言うとしたら、今年度のインカレで全員で喜びを分かち合った時に、僅かながらでも何かチームに貢献できたと思えたら、それはかけがえのないものになるのだろうと想像している。

 本番はこれからだ。懸命に頑張る1年生、芯の強い2年生、陰から支え雰囲気をつくる頼もしい3年生、苦楽を共に乗り越えてきた4年生、ジャンプ班も兼任しているプレイヤー、私達ノルディック班11人ならどこまでも強くなれる。そして、共に切磋琢磨し合うアルペン班、応援してくれるマネージャーに支えられたこの素晴らしいチームを、しっかりと率いていきたい。

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