6年前の自分を思い出す / 一般・アルペン班4年 吉田 圭佑

 今年の目標を定めるにあたり、私は行き詰っていた。

 インカレの時には「夏頃になればなくなるだろう」と勝手に考えていた未知のウイルスは6月になった今でも猛威を振るい、人々を恐怖に陥れている。現在はいくらか活動制限が緩和されてものの、大規模なイベントや大会は自粛の潮流が続き、しかも今後感染の第二波が来る可能性についても盛んに報じられている

 このニュースは、来年のインターカレッジの開催の可否すら分からないということを意味する。当たり前のようにそこにあったはずの目標が突然“不確定な存在”になってしまったのである。

 この事実を目の当たりにして以降、自主トレーニングに身の入らない日々が続いた。4年という最後の年に先が見えない中、存在するかどうかも分からないゴールに向かって走ることの辛さを思い知った。

 そんな中、私はテレビで久しぶりにアルペンスキーの試合を見た。スポーツ大会が軒並み中止になり、放送するものがなくなったスポーツチャンネルが、昨シーズンに苗場スキー場で行われたワールドカップの再放送をしていたのを偶然見つけたのである。

 トップ選手のダイナミックな滑りを久しぶりに見て、そのかっこよさに改めて魅了された。それと同時に私がこの競技を始めたきっかけを思い出した。

 高校時代基礎スキー部だと思い込んで行ったスキー部の説明会で“アルペンスキー”の世界を知った。先輩に見せていただいた動画の中で選手たちが魅せていた滑りはとてもかっこよく、当時の先輩に「俺もこんな風になれますかね」と聞いた。「なれるなれる!」と先輩は即答。結果的にこの一言が私をアルペンスキーの世界へと誘い込んだ。(今思うと当時の自分ちょろすぎるな、とも思う)

 そうだ、私は速く、かっこよく、魅力的な滑りがしたくてアルペンスキーを始めたのだ。いつからだろうか。自分よりはるかにレベルの高い人たちに囲まれる中、いつしか彼らに勝つということしか頭に入らずこの気持ちを忘れていた。

 私は、インターカレッジの開催が危ぶまれる今シーズンこそ、この初心を大事にすべきだと思う。今年は勝つためというより自らを高め、私が高校時代思い描いていたレベルに到達するためにスキーをしようと思った。

 7年のアルペンスキー人生、最後の一年はもう動き出している。