丁寧に丁寧にチューンナップした板を合わせて左手で大切に持ち、右手にはポールを持つ。自分のビブナンバーと同じ番号を見つけると、板を履きスタートレーンに入る。「どれだけやれるか。」楽しみであり緊張の瞬間である。 スタートは意外とさっぱりしていていつの間にか始まっているのがお決まりだ。号砲とともに140人が一斉にスタートする。いきなり待っているのは急な登り。坂に差し掛かるとき、それはそれは不安でいっぱいだった。しかし、次の瞬間には「いける」そんな気がした。グリップワックスも決まり、出だしは最高である。 調子に乗った自分はその後のなんでもない下りで転ぶことを予想していなかった。急な登り。下り。登って、やや鋭角に曲がってからのいわゆる「休憩」ポイントで転んだのである。スピードを0にした。すでに心は折れかけている。しかし先は長い、そんなことは言っていられない。ヘアピンを慎重に曲がりきり、給食所で待つ同期には目もくれずひたすら滑った。 応援の声が遠くなったころ、つらく長い坂がやってきた。視線を少し上げると無数のビブナンバーが目に入る。それもそうかと一つ一つ順位を上げるつもりで突き進んだ。すでに疲労感はあるが、案外しっかり踏めばグリップは効く。ワックスを外した選手もいたようだ。最後は腕の力を振り絞りなんとか登りきった。 2周目もやっと回りきり、いざ、3周目。これが厳しい。「まだ半分以上ある。」そんなことばかり頭に浮かぶ。本当の勝負はこれからだ。同期が差し出すゼリーを口に含み、3回目の長い長いあの坂に突入した。「またか・・・」ため息交じりに顔をあげるとどうだろう、そこにはまるで“害虫駆除用のトラップ”のようにたくさんの選手が取り残されていた。ここは体力勝負。身体を倍動かし、一気にライバルを置き去りにした。こうなったらどこまでもいける。 と、自分のスキー部人生は30キロクラシカルのレースそのものだったように思う。良い結果を残し、挫折し、停滞期を迎え、一番盛り上がってきたときに引退。 本当にいろいろな人にお世話になりご迷惑をかけ、様々な勉強をさせていただきました。今後は自分が、スキー部の更なる発展に少しでも力を添えられたらと思っております。 ありがとうございました。 |
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