『夏』のない夏。 / 一般・アルペン班4年 間瀬 麻日

 7月15日、インカレの日程が発表された。あぁもうそんな時期なのか。

 東京を離れて何ヶ月がたっただろう、私は実家である愛知県にいる。
3月の中旬にたまたま実家に帰っている間に緊急事態宣言が発令された。長い長い春休みのような、そんな気分から未だ抜け出すことができなかった。

 ”1回休み”になってしまった人生ゲームのコマのように私の時間は止まったままだ。そんな私を置いてきぼりにするように時は流れ季節は移り変わり、そして夏を迎えた。例年であればむせかえるような熱気の中で、燦々と日差しを浴びながら構内を走り回り、部室の汗や制汗剤の匂いに顔をしかめながらクーラーの冷気を求め、朝練の後アイスを買いにコンビニにみんなで行ったり、みんなで夏祭りとか行きたいね、なんて話をしながら部員たちと過ごす時間であるはずである。

 先日、後期もオンライン授業になることが発表され東京へ戻る不安から解放された安心感とみんなに会えないやるせない気持ちが混ざり合ってなかなか飲み込むことができない。みんなはどうしているだろうか。

 スキー部にとって夏とは冬に向けてのトレーニングであることはもちろんだが、それと同じぐらい部員たちとの思い出も非常に大切なものであると私個人は思っている。
 どんな話をした、どんなことが起きた、誰と過ごしたのか。それは数年後、数十年後まで覚えているものだと思うから。その経験を1年間することができない今年の新入生のことを思うととても心苦しい。

 私の目標は前回のインカレ終了後に即座に決めていた。

 回転、大回転の両方でポイントを取ること。これは3年間のインカレで達成できなかった目標でもある。どちらかではなく、両方同時にポイントを取るということ。揺るぎない目標があるというのはわかりやすい。しかしそのわかりやすさというのは諸刃の剣でもある。

 インカレが開催されるかわからない、部員とも今年初めて会えるのがいつになるかがわからない、今シーズンみんなと合宿ができるかどうかがわからない。

 私は今、何を目標にすべきなのだろうか。

 目標としている光が消えかけていた私に、インカレの日程が発表されたという事実は暗雲を吹き飛ばす太陽のように私を励ましてくれた。

 いつもと同じように日程や時間を手帳に書き込んでいるうちに、だんだん笑みが溢れてくる。

 みんなと過ごすいつも通りの『夏』はないけれど、やるべきことは変わらない。

 鳴きたてるセミの声だけがいつもと変わらなかった。