冬は短し滑れよ乙女 / 一般・アルペン班3年 間瀬 麻日

 リフトの上で自分のヘルメットやワンピースについた雪を払い落とす。手袋の中や首元に入り込んだ雪が体温で溶けて身体を冷やす。

 2020年記念すべき初転倒。不思議と嫌な気持ちはしなかった。

 一進一退、七転び八起き、三歩進んで二歩下がる。私にとってアルペンという競技はそんな言葉がぴったりだ。目に見えて良い日もあれば、次の日には調子が悪いなんてことはよくあること。文字通り転倒しては立ち上がりを繰り返す。特に競技を始めた1年生の頃は色んな意味で滑っては転けてばかりで挫折を味わった。

 3年生になるまで私はアルペンの女子の先輩も同期も後輩もいなかった。アルペンは全くの初心者ではなかったが、部活という形でスキーに関わったのははじめてだった私にとって頼れる直属の女子の先輩がいないことは本当に辛かったのだ。
 冬の合宿では自分と他大の女子選手や同期の男の子たちを比べて経験の差を目の当たりにし、苦しい時を過ごした。自分だけが経験者ではないことで勝手に疎外感を感じ、みんなより遅れをとっている、同じ場所に立てていないと思っていた。頬を濡らした夜も一度や二度ではない。切磋琢磨する相手がいないのは本当に辛いことなのだと気づいた。ずっと合わせ鏡の中の自分と戦っている気分だった。

 しかし考えてみれば敵と戦っている時間などアルペンで考えたら1時間もないかもしれない。自分自身と戦うこと、自分と真摯に向き合うことが1番大切なのだ。
 2度の冬を越しそれにようやく気づけた時、私は先輩になっていて振り向けば後輩ができていた。しかも2人ともアルペンは未経験だ。彼女たちも成長に伸び悩んだり周りと自分を比べて苦しい思いをしたり、この競技の難しさに打ちひしがれ、"転倒"してしまうこともあるだろう。そんな時立ち上がるのに手を貸せるような先輩に私はなりたいと思う。

 限られたこの季節で雪の中、座り込んでいる時間はない。私たちは転んだとしても立ち上がり、そして前を向いて滑らなければならない。

 さぁ、次の1本もがんばろう。