苦悶→開戦 / ノルディック班3年 吉田 圭汰

 気象というものはどうもよく分からない。学習院は紅く染まり、耳元で風が冷たく鳴る。今年は秋を置いて冬が突然来てしまった。風が掠る頬が痛い。歩く時は無意識に猫背になってしまう。それでも、スキー部の私は息が白くなるのが嬉しくてたまらない。外気温と反比例して闘争心が高まるばかりだ。

 オフシーズンはチーム全体ではまずまずの結果であった。最後のタイムレースでは自分を含む多くのプレイヤーがベストを更新した。とりわけ今年は一年生の躍進に注目が集まった。女子では石毛が歴代ランキングに名を連ね、男子では高橋が19分台に食い込みアルペン班三年生を圧倒した。期待以上の結果を出してくれた彼らを心から尊敬する。

 私はというと、2019年はスタートから辛かった。1月に親友を亡くし、夏には母が大病をして精神的に強靭な自分でもすぐに立ち直れないことが多々あった。そのせいではないが、後期に初めてスランプも経験した。足が動かなければ、記録も出ない。こんなはずじゃない。それでも毅然と副将でいなくてはならない。口にできない、静かな焦りと苛立ちが常にあった。

 しかし、ここからが理屈屋の本領発揮である。まず、そもそもスランプとは何なのかを冷静に考えた。すると、私が感じていた焦燥感などの原因は、ノル班同期である足立とのリザルト格差やローラースキーのフォームの違和感、昨年ほどリザルトの変化率が大きくないことであった。なるほど、どうやらスランプというのは理想と現実のギャップであり、成長率が逓減する時に起こるものらしい。

 これに気づいてからの巻き返しは早かった。ならば、と無闇に理想的な目標値を掲げるより、現在のパフォーマンスをできる限り上げることを心掛けた。何が足らず、それに対して何をするのか。そして気づけば最後のタイムレースは自己ベスト且つ全体2位で終えることができた。

 一年目の雪辱はまだ果たせていない。自分が三部に落とした学習院を二部に引き上げ、もう一度仲間と二部で戦いたい。準備はできた。勝負はここからが本番だ。