在るべき姿を意識して / ノルディック班3年 五十嵐 有冴

 あのキャベツ畑の匂い、滴る汗、飛び交う掛け声…

 あぁ今年もこの時期がやってきたと記憶を呼び覚ましながら、私は未だかつてないプレッシャーに苛まれていた。
 今までは自分の限界値を越える事に全精力を傾注していたが、今年はそれに女子トップとしての義務が加わったからである。
3年の前期を終えて思うのは「井の中の蛙」という言葉がまさに今の私に相応しいということだ。他大学や過去の先輩のリザルトをみるたびに感じる。

 しかし、なかなか見えない目標を追うのは難しいということを身を持って体験した。
 私は今回の16kmタイムレースで、私が1年生の時に1番速かった4年生の先輩の記録に17秒届かなかった。

 追うのが、ただ左手に表示された刻々と進む小さな数字ではなく、先輩の背中だったとすればもしかしたら結果は変わっていたかもしれない。そう思うと、まずは後輩達にとって私が見える目標となるしかないと思うわけである。勿論、それはただの通過点という位置付けではあるが、自身がもっと強くならなければこの部の女子プレイヤーも強くならないということは必然的に感じる。

 まだ正直、後輩達を引っ張っていく上でなにが正解か全くわかっていないのかもしれない。落ちた後輩がいればもっと引っ張ってあげなければと思い、ついてきてくれれば嬉しい反面、負荷が足りなかったのではないかと不安になる。
 息が切れた中で、疲れたねと共感すれば良いのか、辛さなど一切見せない方が良いのかそんな些細な感情の出し方でさえ迷っている時もある。こんな未熟な私でも、ついて来れば大丈夫だと成功の道しるべとなってあげなければ、まだ彼女達は道無き道を自分で切り開くことまでは出来ないであろう。

 話は変わるが、今回の合宿で嬉しかったことが一つある。
 4日目午前に行われた中距離ペース走だ。こんなの中ペじゃないといわれた一昨年、もうやる意味がないと打ち切られた昨年。これが女子の評価だった。
 ただただ悔しかったあの感情は今でも忘れない。そして私がトップの時は絶対こんな思いはしたくないと思った。 だから今回皆で一斉ゴールはできなかったものの、棄権もなく最後までこなせたことは誇りに思う。

 このように少しでも強くなり、皆でお互いを高め合える女子プレイヤーになりたい。それぞれの努力の仕方、結果の出し方を見つけ皆で切磋琢磨していければ良いと思う。
 
私達の目指すところはまだ先だ。

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